再び高木の製作に戻ります。
まずは全体の塗装をして塗料が乾いたら、少しホワイトを足して、サッサッサッとドライブラシで質感を高めます。
葉についてはいろいろ考えたのですが、ここはスタンダードにスポンジ系の素材で製作することにしました。同じ素材でも、カットの仕方で雰囲気が変わってしまいますが、このスポンジ素材は、千切ったような
細かなゴツゴツとした感じで、またボロボロになる具合もちょうど良く、日本によくある木がそれらしく表現できそうです。
それぞれの枝の上方に木工用ボンドの原液を付けて、スポンジ素材を密着させるように一度軽くギュッと押さえて接着させます。
ジオラマのミニチュア木の製作では超スタンダードな製作方法ですので、特に記載するほどのコツというものはありませんが、自然の木は葉が枝の下側には付いていないものがほとんどですので、ミニチュア木の製作でも、葉の役割をするスポンジを枝の下側には接着させないようにすると、完成後に本物の木のように見えます。
葉にスポンジ素材を用いると、製作時間も短縮できますし、まとまりのある仕上がりになりますので、時として頼りがいのある素材です。
枝のスポンジ素材の接着に使用した木工用ボンドを乾燥させています。
でも、乾いたら完成ってわけじゃないんです。
この画像を見ると一目瞭然ですが、木の中央から下の方の枝の長さが中間部上方の枝よりも短くて、とっても不自然な木になっています。
これは、2本の木を上下に重ねて大木にしたためにそうなっています。
最初に接着させたスポンジ素材が乾いたら、枝の補正作業を始めます。
とはいえ、それほど面倒な作業ではありません。具体的には、短く見える枝に更にスポンジ素材を横方向に接着して葉の面積を広げてゆくだけです。
補正のためのスポンジ素材を接着させた木工用ボンドが乾燥するまでは、横に寝かせておきます。
木を縦に置いていると葉が下に下がってきてしまうからです。
若干木の上方が下になるように勾配を付けて寝かせておきます。
中央から下側の枝に葉が盛り盛りとなり、それっぽい木になりました。
今回のジオラマでは、前ページで製作した、たくさんの低木と、この高木1本の2種類で植栽を行います。
高木はジオラマ製作の最後にジオラマベースに取り付けますが、低木は早速取り付けてしまいます。植栽を行うとぐっとそれぽくなってきてテンションが上がります。大木も植えてしまいたいところですが、今後の工程を考えると製作の邪魔になるので、今はおあずけです。
低木は、
モデリングペーストを使って畝(うね)を造り、そこに挿すようにするイメージで植栽をおこないます。
まずはアクリル絵の具のブラウン、黄緑、グリーンを適当に混ぜ、色付きのモデリングペーストを作ります。
ペーストができたら、細かくカットしたミズゴケを混ぜてモデリングペーストの質感を高めます。
ミズゴケ入りのモデリングペーストを畑の畝(うね)のように盛っていきます。
畝(
うね)ができたら、低木それぞれの色合いや位置のバランスを考えながら丁寧に挿していきます。
きれいに並び過ぎないように微妙な位置関係になるように気をつけつつ、低木の植樹が終わりました。
畝(うね)の外側は、タミヤの情景テクスチャーペイント(草グリーン)を使って草で覆われた感じを出します。
橋はこんな感じに雑草を生やしました。これもタミヤの情景テクスチャーペイント(草グリーン)を使用しています。
画像ではわかりにくいのですが、轍(わだち)にも踏まれて枯れた草という設定にして、タミヤの情景テクスチャーペイント(草カーキ)でそれを表現しています。
川側と陸側のジオラマベースが結合させて、結合部を消す工程、陸側の一旦の造り込みもこれでほぼ終了しました。
これで今回のジオラマのベースの工程は完了です。
これから、ジオラマベースに京町家を載せる工程に入ります。
京町家をジオラマベースに載せる前の工程として、建物周辺の造り込みに入ります。まずは玄関入り口の前の踏み石の製作です。
(厳密に言うと踏み石の類には入らないかもしれませんが便宜上そう表現することにします。)
石垣を造った時のように本物の小石を使用するという手もありますが、ここはあえて一から製作したいと思います。
本物素材で本物のように見せることばかりしていると腕が落ちてしまいそうですので(汗)
エポキシパテで板状にしたものに、爪楊枝を使って石の不規則なパターンを描いていきます。
この段階では、まだまだ作り物感満載ですが、最後にはしっかりと化けてくれますので(笑)気にせずに製作を進めます。
タミヤのカラースプレー(ブラック)が残っていましたので、それを吹いてから、ウェザリングを入れています。
玄関の石は黒御影石(黒御影石)がイメージですので、つや消しのブラックではなく、ツヤのある通常のブラックです。
ただ、新築ではなく、使い古された京町家がイメージですので、汚くならない程度に汚しを入れて、ギラギラするほどのピカピカを程よく消しました。
実物の建築では、目地はコンクリートで埋めるだけが多いのだと思いますが、今回のジオラマで造った京町家は、とある小京都にある隠れ家的な宿で、見た目は質素ですが、質素な中にも少しこだわりのある建物というのをコンセプトにしていますので、目地もコンクリート風だけで終わらせません。
まずは、画像のように注射器を使って目地の全てに水溶き木工用ボンドを流します。
そこに、海の砂を豪快に撒きます。
(”豪快”でなくてもいいんですけどね(汗))
水溶き木工用ボンドが乾燥する前に、石の表面に付いている砂を小筆で丁寧に払います。
ここは”豪快に”というわけにはいきません(笑)力を入れ過ぎると目地の砂も筆に持っていかれてしまうんです。
水溶き木工用ボンドが乾いたら9割の完成です。
残りの1割は見た目の違和感を消す工程になります。
水溶き木工用ボンドにアクリル絵の具のブラックを混ぜてグレーにして、それを注射器で目地に流していきます。
砂の完全固定の意味と塗装の両方の意味があります。
先ほどの踏み石に違和感があるのは、砂が強調され過ぎているからだと思ったからです。
本物の建築を見ると、黒御影石の踏み石と目地の化粧として砂(砂利)をそのままというのが多いので色を付けなくても本来は問題はなかったのかもしれません。
ただ、ジオラマにするためにミニチュアにして再現すると、本物の色使いなのに違和感を感じることが時々ありますが、今回はそれだったのだと思います。
ということで、水溶き木工用ボンドが乾き、無事に踏み石が完成しました。
石っぽい輝きは残しつつ、一方で使い古された感じも入れたいという気持ちがあったのですが、ちょうどバランスの良いところで落ち着かせることができて一安心です。
京町家をジオラマベースに載せる前の工程のその2は、犬走りの製作です。
犬走りはコンクリート無垢でいきます。
お手軽でそれっぽい表現ができそうなので、タミヤの情景テクスチャーペイントの路面(ライトグレイ)を使うことにしました。
今回はミズゴケなどの余計なものは混ぜないで、タミヤの情景テクスチャーペイントをストレートに使います。
ストレートと言えば、ず~っと昔、サントリーのウイスキー「山崎」のCMに”何も足さない。何も引かない。”っていうのがありました。これは櫻にとって、かなり衝撃的なコピーでした。
ジオラマ製作もかくありたいと思いつつも、ついつい”足して”しまうことが多いです。引き算ができるようになれて本物なんでしょうね。
”自由に引き算ができる情景家”自分でそう思える日が来ることを夢見ています。
まずは、足し算をやめないとですね(笑)
余談ついでに、この”何も足さない。何も引かない。”というコピーは、コピーライターの西村佳也(にしむらよしなり)さんという方の考案です。他にも西村さんは、”触ってごらん、ウールだよ。”など、有名なコピーをたくさん生み出されています。
”ペンは剣よりも強し”と言いますが、言葉の強さって凄いですよね。
・・・
余談が長くなってしまいました。製作に戻ります(笑)
犬走りは、1.5mmのプラバンを切り出しただけのものです。これにタミヤの情景テクスチャーペイントの路面(ライトグレイ)を均等に平たく塗り付けます。
犬走りに塗ったタミヤの情景テクスチャーペイントを乾燥させています。
踏み石と共に犬走りをジオラマベースに接着させました。地面の土との境界部分が目立っていたので、土と同系色のエナメル塗料を面相筆で塗りました。若干基礎に塗料が付いてしまうのは、かえって生活感があっていいかなぁと思い、そのまま気にしないで塗装を進めました。
犬走りの上面には、ほんの少しだけ土色でウェザリングをしてあります。
京町家をジオラマベースに固定させます。
やっとここまで製作が進んだかと思うと感無量です。
画像は京町家の裏側を屋根の下から地面までプラ棒で固定させているところです。
これは大黒柱に相当するものです。京町家の中心に入れて、いざという時でも転倒を防止させます。
瞬間接着剤で仮固定させてから、プラリペアをふんだんに使って完全固定させます。
とにかくちょこっとした力で取れないようにするのが櫻のポリシーです。でも、ここまで強力に接着させてしまうと、
”取れない”か”壊れて取れる”かのどちらかしかありません。でも、ジオラマは大事に扱うものですから、まずは取れないことを大切にしています。
底の部分も、プラリペアで完全に固定させます。見た目はちょっと汚いですね(笑)これは余り(ハギレ)のプラ板を使用しているためです。小さくなったり、曲げるのを失敗したプラ板も、もったいなくて捨てられないんですよね~。このような見えないところで活躍していただいています。
京町家が建ったばかり(笑)のジオラマの写真を撮るのを忘れてしまいましたので画像がありません(スミマセン)。
製作記は、次のページでいよいよファイナルになると思います!(大喜)